Pebble in the sky of rajendra

Dec 21

6.ヒ素と銀食器

  実は、この人が医薬分業、薬剤師と非常に関係があるんですね。このナイーブなフリードリッヒ二世という王様がいちばん怖がったのは、当時、中世ヨーロッパでは、毒殺の歴史があって、特に王位継承者に対する毒殺が頻繁に起こっていました。次々と王様が一服盛られて殺されてしまう。一服盛られるのは何かというと、ヒ素です。和歌山のカレーライス事件というのがあったでしょう。ヒ素というのは無味無臭ですから、水に溶ける。そしてカレーライスの中に入れて食べさせたという事件がありましたけれども、毎日食べさせていると、いつの問にか、何の病気か分からずに死んでしまう。食事の中に入れて非常に微量ずつ食べさせていると、これは何で死んだか分からないわけです。ですから、ヒ素による毒殺というのはものすごく歴史が古いんですね。どこの国の王様も、自分の食事の中にヒ素が入っていないかというのがいちばんの問題だった。それをどうやって発見するか。毒見役がいるけれども、毒見役というのは、毒見役がその場で死んでくれないと意味がない。それくらいの強い毒でないとダメなんですね。毒見役はピンピンしているけれども、毎日入れられて3年でやられる毒がいちばん怖い。そういうヒ素というものがずっと使われてきたわけです。
  それを、銀の食器を使うことによって防止できるということを中国で発見するんですね。もう古い歴史の物語ですが、銀の食器にたとえばカレーライスを盛ったとすると、銀とヒ素が化学反応を起こして銀食器の色が変わるんです。色を変える、化学の反応ですね。そのために、中国から始まって、現在でも王家とか伯爵といったところでは全部銀食器です。お金持ちだから銀食器を使っているんじゃないんですよ。命がけで銀食器を使っている。本当に贅沢をしたいのなら、金の食器を使えばいいわけですが、金ではダメなんですね。銀の皿と銀の匙を使わないとダメ。そこはそれで解決をする。ですから銀食器を使うことによって、ヒ素といういちばん嫌な毒から守られるわけですが、問題なのは、宮廷医が一服盛るという問題があるんですね。つまり、悪い連中が出てきて、その王様を殺してこちらの権力者を、立てたいというので、兄弟、親子で争った。日本の歴史もそうです。風邪をひいて熱が出る。そこへ宮廷医がやってくる。もう信頼しているお医者さんですよね。「これは風邪であろう。じゃあ薬をつくって与えましょう」と言う。ところが悪い連中と組んでいるから、そのチャンスを待っていて、一服盛って殺してしまう。おまけに死亡診断書を書く。医師というのは、処方ができて、調剤ができて、死亡診断書が書ける。ある時期、ずっと日本もそうだった。いまでもそういう部分があるのですが、当然西洋でもそういう時期をずっと経てきた。つまり診断をし、処方をし、調剤をし、死亡診断書を書くということは、闇から闇に葬られるものなんですね。

アスカ薬局 コラム 佐谷 圭一 薬剤師への道標

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